データで振り返るStepUp.ioのリアルな3ヶ月

これまでの経緯

Benkyo Player LTDという会社を7月に設立してからはや半年経とうとしています。詳しい経過は「ロンドン起業日記」を買って読むなり、この日記の過去ログを見てもらえば良いのですが、かいつまんでいくとこんな感じです。

  • 2012年11月のハッカソンで動画字幕検索アプリであるBenkyo Playerのプロトタイプを作りあげる
  • Bethnal Green Ventures というシードアクセラレータに応募、2013年7月からサイトを本格的に作り上げる
  • 2013年8月にMVP(Minimum Viable Product)を作り上げるも全然ユーザー数が伸びず、BGVの人からもピボットを勧められたりする
  • 2013年8月いハッカソンで反復学習アプリStepUp.ioを作り上げる
  • 2013年9月にBGVは終了。Nominet Trustという団体の助成金にうかる

2013年9月の自己採点は「10%」、その時の自己分析は以下のようになります。

  • 見込み客に聞き取り調査をしたとき「使いたい」と言われたけれど、実際にMVPをつくっても「使って」もらえなかった
  • コードを書いてばかりなのとB2C か B2B かに絞りきれておらず、ユーザが誰かの定義が曖昧、よって獲得活動が十分ではなかった
  • たまに使ってくれるユーザーもBenkyo Player の目玉である「検索機能」を全く使ってくれていなかった。

最後の「検索機能を全く使ってくれていなかった」ことは致命的だと思いBenkyo Playerはひとまずお休みして、StepUp.ioに注力することにしました。

その時にしようと思ったことが3つあります

  • 常にデータをとり、「毎週10%の成長率」を達成しているか確認する
  • マーケティングファーストの姿勢。自分のサイトが使いずらくても ガンガン人に「使って」、というのをためらわないようにする
  • ユーザビリティテストを頻繁に行なう

特にマーケティングに関しては「エンターテイメント分野にまず売り込み、最終的に 教育目的としても使ってもらえるような戦略」なども考えていました。

データを取ることに関してはGoogle Analyticsのデータや自前のログ解析システムをつくったりして毎週のようにデータを分析していました。
そこでそれらのデータとともにこれまでの3ヶ月間を振り返っていきたいと思います。

ユーザー訪問数(Unique Visitor)

まずは週単位のユーザー訪問数です。
これだけを見ると「11月後半までは週10%をこす勢いでのびていたけれど12月にスローダウンしている」ということが読み取れるように思います。
しかしながら実際には日単位でみるともっと複雑だということが見て取れます。

これも11月の終わりに大きなスパイクがありますが、それ以外にも小刻みなスパイクがありますよね。
今回は実際にMVPが出来上がって一般公開したのは12月の始めだったのですが、それ以前から「マーケティングファースト」の姿勢を貫くためにスタートアップ関連のイベントにでて宣伝活動を行なっていました。以下が各イベントに参加した日付です。

マーケティング(リアル)

「サイトに人を呼び込む」という意味で一番宣伝効果が多かったのはTechCrunch Tokyo のスタートアップバトルに出場したことでした。逆にほとんど効果がなかったのが10月末にケンブリッジで行なわれたMosaic3DXという3Dやゲーム関係者にむけて行なわれたイベントとニコニコ会議でした。前者に関してはブースに出店して、来場者あてにデモンストレーションをしていたので実際には多くの人の目に触れたはずです。しかもその場で興味を持ってくれた人にはアカウントまで作成したのですが、そのイベントのあとに実際にStepUp.ioまで訪れた人たちは少なかったようです。ニコニコ学会は会場の人数は少なかったものの、ニコニコ動画を通して1万人以上の目に触れたはずなのに全然サイトには訪れてくれませんでした。「捗る」「これはいい」といったコメントが乱舞していた割には非常に残念な結果です。しかしながら「いい」と言ってくれる人が必ずしも使ってくれるとは限らないというのはBenkyo Playerですでに経験済みなのでそんなに落胆はしていません。

こういうイベントに出ていて思ったのですが、スタートアップ関連のイベントは華やかなんですが、そのうちのどの程度が実際の見込み客にあたるのかはちょっと不明です。本当はギター初心者や語学初心者が集まるイベントで発表できれば良いのですが、そういうのがどこにあるのかまだ見つけていないのが現状です。

マーケティング(ネット)

実はユーザー訪問数が劇的に伸びたのはイベントで話すのよりもネット上での広報活動によります。

まず最初の山「Lux Super Rich」ですが、ちょうどこの頃「LとRの発音を練習するにはLux Super Richを繰り返すのが一番」というツイートが2万回以上リツイートされたことが話題になりました。そこでLux Super RichのビデオをStepUp.ioに取り込んで、それをそのツイートした方に見せたところ、リツイートしていただいたり「洗脳アプリ」といったコメントなどをいただくことで、結構訪問数が増えました。

2度目の山はRedditというアメリカ発のソーシャルニュースサイト(どちらかというと掲示板に近いです)。オバマ大統領が質問を受け付けたりしたことなどでも有名で、日々の訪問者数が200万を誇る怪物サイトです。ちょうど11月の始めからインターンの人を雇ったのですが、彼がRedditを使い込んでいるらしく、最初はクッキング系やゲームの解説などのスレッドにStepUp.ioに関して投稿していたらそこそこの訪問客がそのサイトから訪れました。そこで色々なジャンルを試したところ「HALLELUJAH」というギターの練習ビデオが当たって、かなりの数の訪問者数を呼び込みました。

このRedditを通したプロモーションに関しては3点学習したことがあります。

一点目に、今までYoutubeのコメント欄やツイッターで個別に書き込みをしててもあまり効果がなかったのですが、こういう興味のある人がたまっている場所に投稿するのは効果があるということ。でも同じスレッドに何度も似たような書き込みは出来ないのでそう何度もできるものではないかもしれません。言ってみれば焼き畑農業みたいなものでしょうか?火は出るけれどずっとは出ないし、常に場所を移動し続けなければいけないという点でピッタリな形容かと思います。

二点目に重要なのは「2〜3ヶ月もかけて自分のアプリをMVPまで持っていかなくとも、自分が解こうとしている問題に需要はあるか、というのを調べることは可能」ということです。
なぜならRedditの書き込みのタイトルは「Use youtube for learning songs this makes that a lot easier」(Youtubeを使って歌を習うのにこいつを使うと簡単だよ)というもので、書き込み自体にはアプリの画像もなければ詳しい説明もありませんでした。要はこの書き込みを読んだ人たちは「youtubeで歌を学習するための効率的なツールがあるか」ということに反応したからです。 「自分の抱えている問題に同意してくれる人は多い」と安堵する反面「でもこれだけだったら9月ぐらいにテストできたよね」と反省しきりです。というのもStepUp.io自体はクッキングから語学学習からいろいろ応用範囲は広いのですが、その分ユーザーインターフェースが特定の分野に特化できてない中途半端なものになってしまったと思うからです。9月の時点でどの分野に集中するか(ギター)決めておいて、それだけに特化した機能をつけていくことで開発の無駄を省けたのではと少し後悔しています。

三点目ですが、ユーザー数というのはマーケティングに時間をかければ増やすことができるけれど、リピーターがいないとあっという間に元に戻ってしまうということです。12月に訪問者数が減ったのは端的にそれを示しています。というのもクリスマスにかけて私もインターンの人もマーケティング活動をしなくなると、「これまで週10%以上の割合で増えていた」と思っていたユーザー数があっという間に元にもどってしまったからです。

新規獲得ユーザー

新規獲得ユーザー数もページ数に比例して伸びているようには見えます。でも肝心なのは「訪れたユーザーのうち何人が新規登録してくれたか」のコンバージョンレートだと思います。

それを表したのはこちらです。

二つほど大きな山がありますがこれはMosaic3DXなどのリアルなイベントにいった際、私がその場で説明して興味を持ってくれた人にアカウントを即時発行していたからです。
この時獲得してくれたユーザーの中には、メールやツイッターで使い勝手などについてフィードバックをくれる人が何人かいて重宝しています。やはり直接ユーザーに話しかけるという行為は重要だと再認識させてくれます。

11月半ばまではそもそも招待制だったので浮き沈みが激しいのですが、12月にβオープンしてからは大体1.5%から3%ぐらいのコンバージョンレートをうろちょろしています。

その他試したこと

  • ボカロ

「エンターテイメント分野にまず売り込み、最終的に 教育目的としても使ってもらえるような戦略」を実践に移すため、ニコニコ動画でボカロ(ボーカロイドというサンプリングされた人の声をもとに歌唱曲をつくるソフトウェア)に振り付けをつけて踊る人をターゲットとする方法も試してみました。具体的には歯茎ピペットというダンスユニットのメンバーであるあきゃりさんの協力の元、踊り手の人たちが集まっている場所(代々木公園)にいって実際にデモしたりしました。ここでも実際にサイトを見せた時は「これイイ」と言ってくるのですが、なかなかリピータとして定着してくれません。1つの仮説としては「ボカロの曲を練習する多くは女子中高生が多いのだけれど、彼女達は英語のサイトに怖がって近寄ってもらえないのでは」ということです。

  • クリスマスコレクション

クリスマスに向けたいろいろなハウツー系をまとめたものを「クリスマスコレクション
としてまとめたのですが、あまり効果はありませんでした。このコレクションにたどり着いてから新規登録してくれたユーザーはログを見たところまったくいないようです。
せっかくクリスマス用のバナーまで作ったのに!!

  • デモビデオの作成

今までのホームページにあるビデオは私がどこかのイベントの発表用に作ったものでかならずしもユーザーに向けて作られたものではありませんでした。
そこでちょっとお金を奮発してプロをやとって専用ビデオを作成してみました。


まとめ

ここまで分析してふたつのことに気づきました。

  • ボカロ、クリスマスコレクションといった突発的なマーケティングプランや、サイトを良くするための機能追加で訪問者数増加や新規ユーザー獲得に結びついたものはあまりない
  • 訪問者数増加や新規ユーザーというのは機能追加に関係なくマーケティング次第で増加は可能だけれど、リピータがあまりいないのでマーケティングの手を緩めるととたんに元に戻る

そしてさらに思ったのは「訪問者数増加や新規ユーザーを見ているだけで良いのか?」ということです。週10%の成長率と2〜5%のコンバージョンというのは一見悪くないように見えますがあまり長期的なサイトの魅力向上に貢献しているように思えません。というかそもそも「StepUp.ioの魅力」とはなんでしょう?そもそもそれを聞き出すためにリピータをなんとか増やそうと躍起になっていたのですがなかなか思うようにいっていないのが現状です。学校とかで使ってもらおうと知り合い経由で何人かの先生に頼んでみたりもしたのですが、あまり興味がないのか「忙しい」となかなか相手にしてもらえていません。「実績がない」と「魅力を分かってもらえない」という鶏か卵かの問題を行ったり来たりしているような間隔にとらわれてしまいます。


みなさんならこの状況をどう打破できるでしょうか?一応対応策をひとつふたつ仕込んではいるのですがそれを述べる前に皆さんのご意見をお聞きできれば嬉しいです。でも持論を展開する前に一度 http://www.stepup.io を使ってみて下さいね。