ロンドン起業日記のその後(2014年4〜6月)


(ロンドンの「Social Video Meetup」でStepUpを紹介中)

昨年の7月に起業してほぼ一年経とうとしています。

11月にロンドン起業日記という本を出版してからも3ヶ月おきぐらいに経過報告を書いていました。

もともとはBenkyo Playerというビデオ字幕検索サービスを作っていたのですが、現在はStepUpというビデオの中から興味深い部分のみを抜き出して反復させるサービスをつくっています。「なんのこっちゃ?」という方は私が最近発表したビデオをご覧ください。

話を元に戻して、前回(1月〜3月)のまとめはこんな感じです。

  • ターゲット層をKPOPダンスビデオとカンファレンス関係に変えてみえた
  • 働く場所と人を変えてみた
  • 次のラウンドの資金調達の準備

前回の終わりの方に「資金調達を頑張る」と書いていたのですが、この3ヶ月は本当に資金調達に時間の大部分を費やしてしまいました。結果的には資金調達には成功していないのですが、得ることも多かったと思うので、その事を中心に書いていきます。

1. 資金調達活動
2. ユーザーと向き合う
3. チームづくり



1. 資金調達活動

ラウンド1 スタートアップ

まず最初に取り組んだのはスタートアップの知り合いを紹介してもらい、彼らにStepUpの説明をした後に知り合いの投資家を紹介してもらうという方法です。色んなフィードバックをもらい、好印象をもってもらったところもあれば、そっけないところもありました。 好印象をもってもらったスタートアップの多くに共通して言われたのは、君がやっているようなことだったらアメリカの投資家のほうがアピールすると思うよ、ということです。

なんでもヨーロッパの投資家はB2B(企業向け)ビジネスを好むのに比べアメリカの投資家は個人消費者向けのものを好むからだそうです。この事について自分なりに理由を掘りさげて見ると以下の結論にたどり着きました。

1. 収益より獲得ユーザー数を重視する場合、多額の投資を必要とするが、ヨーロッパの投資家にはそこまでの資金余力がない。 この事は実際にお会いした投資家の人達自身が「アメリカの投資家のほうがポケットが深い」という表現でのべていました。

2. ヨーロッパだとeu内で規制の枠組みが統一されている場合が多いので、b2bの多国籍展開がしやすい反面、アメリカだと州ごとに規制がバラバラ

3. ロンドンの場合は金融やファッションといったその都市で強い産業と結びついたスタートアップが人気が高いけど、シリコンバレーの場合は周辺の町そのものにはあまり購買力がない。そして他の大都市とも地理的に遠い。

面白かったのは「シリコンバレーで資金調達するべき」と提案してくれた人達の多くは、ロンドンを拠点に活動しているにもかかわらず、会社の登記はアメリカになっていることです。 これは、アメリカの投資家のが投資をする際に、自分たちお抱えお弁護士が海外の基準よりも自国の基準で契約しやすいというのも理由にあるのではと思っています。

ラウンド2 エンジェル投資家
スタートアップ経由で投資家を紹介してもらうのは時間がかかるので、それ以外にも自分でからネットワーキングイベントに参加したり、スタートアッププレゼンコンテストに参加したりしていました。
そこであるエンジェル投資家とであったのでその人にフォローアップのメールを送り、なんとかミーティングまでたどりつくことができました。そこで何日もかけて磨きをかけたプレゼンテーションファイルをラップトップから見せようとしたところ待ったがかかりました。

「パソコンなんか開かなくて良い、それよりもビジネスモデルを、どうやってお金をもうけるかいってくれ」。

いきなり出鼻を挫かれた形だったのですが、なんとかしてビジネスモデルを説明しようとしました。途中でその投資家の人も一緒にビジネスモデルを考えてくれようとしていたのですが、ビジネス用途向けのオンラインビデオ編集ツールと考えたその投資家と、大衆向けのビデオキュレーションプラットフォームと考えていた私の間には少し溝があったようです。

ラウンド3 VC
VCは通常億単位の資金が必要な会社を対象にしているので、私達には少し時期が早いかなと思っていましたが、なるべく早い段階から関係を構築したほうが良いと思い、会うことにしました。

まあ通常会おうと思って会える人達ではないのですが、CapitalOnStageというイベントがあり、それに参加すると2社のVCとの面接権がもらえるということで練習がてらにいってきました。

今回は逆にビジネスモデルに関しては一言も聞かれませんでした。それよりも重視されたのは会社のビジョンでしょうか。「Watch YouTube videos in bite sized chunk」というのを会社の一行説明に書いてあるのですが、それはあくまで機能の説明であってビジョンではないですよね。一応それらしいものは頭のなかではモヤモヤしているのですが、まだ一言でスパッといえないのがもどかしいです。

VCの一社の人は丁寧に対応してくれましたが、彼のStepUpに関しての2つの懸念は

1. これってただのYouTubeの一機能じゃないの?
2. キュレーションってスケールしずらいよね。なんとかしてステップを入れる作業を自動化できない。

1に関しては以前にも何度も言われて着続けたことなので、克服への努力はしつつもあまり気にしないようにするつもりです
2に関しては、キュレーションという作業は主観がはいるので自動化はそぐわないと思いつつも、ケースバイケースなので、自動化できそうなことに関しては試して見ようかと思っています。

2. ユーザーと向き合う

資金調達活動に重点を置いていたのと、デザイナーのさゆりさんが日本に帰ってから一人だけの時期があったのが重なり、開発もマーケティングにも力を注げず、結果として3月には盛り上がっていたサイト訪問者もかなり下り坂になっていました。

それでも定期的にダンス関係の新規ユーザーがいる上、少数ながらもリピーターが出来上がってきているのは嬉しいことです。これらのユーザーとは実際にコミュニケーションもとれるようになってきたのですが、面白いのはそのきっかけがバグ報告だったりすることです。 ユーザーの中にはFacebook上で

「StepUpのすべてが嫌い」


というビックリするような書き込みをしてくる人もいました。よく話を聞くと、大量のバグに関することだったようなので、それを一つ一つ直していきました。彼女がそれに満足したかどうかは定かではありませんが、それいこうメールでコンタクトしても返事をしてくれるようになりました。ユーザとコミュニケーションとるにはバグを仕込んでおくのも良い???

またふとしたことから新たなユーザー層を得ることもできました。

資金調達活動の一貫としてmemrise という語学学習コミュニティサイトを運営するスタートアップを訪問した時のことです。そこのCOOに人にStepUpを紹介したら、彼らのブログでStepUpを取り上げてもらうことになりました。するとそこのコメント欄でユーザーの人達が、StepUpの語学学習の利用法について議論を始めてくれたではないですか。しかもそのブログを読んでくれた読者が今でも断続的にStepUpに新規加入してくれています。

StepUpの語学利用は去年も考えていて、自分達のブログで取り上げたり、他のサイトの掲示板に投稿したりしてもなかなか反応がありませんでした。でもほかのコミュニティの中心メンバーに認めてもらえれば、そこから一気に道が開ける可能性があることも学びました。

3. チームづくり

先ほど述べたように一人で活動していた時期には、「チームとして出来上がってないじゃん」、と苦しいことを言われることもありました。しかしながら最近パートタイムでも手伝ってくれる人が2人出てきて、投資さえ確保できれば彼らをフルタイムで迎え入れる用意が出来てきました。そして新たにサマーインターンの人も雇うことになったのでしばらくは4人体制でいけそうです。

「結局資金調達失敗したのにこれからどうするの?」とご心配な方もいるかもしれません。なんでもお金をもっている投資家の人たちは7月から9月まではバケーションに出かけているため、夏場にエンジェル投資家からの資金調達をすることは至難の業なんだそうです。

幸いこれまでケチケチ運営+少人数できたおかげで資金はまだ余裕がある上、少しながら収入の目当てもついているので、ここしばらくは資金調達なしでなんとかやっていけそうです。そこで夏の間はユーザー開拓の方に集中して、9月末には「お〜、StepUpもりあがっているね」と外部の人たちにいってもらえるような状態に持っていきたいです。