Innovation Weekend LondonとHackOsaka

金曜日に日本のベンチャーキャピタルの SunBridge Global Ventures さんが主催の Innovation Weekend London  というイベントでプレゼンしてきました。もともとは落選していたのですが、ドタキャンがあったので当日に参加が決まりました。

「Tシャツに短パン」という非常にカジュアルな出で立ちで登壇したのですが他の人は結構きっちりした服装の人が多かったです。日本企業主催だったので「失礼のないように」とみんなかしこまってきたのでしょうか。

今回も特に優勝とかとはほど遠かったのですが主催者の方々とあとでいろいろお話できたのが良かったです。
「財団法人都市活力研究所」というお固い名前の団体の方々と名刺交換をさせていただいたのですが(こういうのも日本的ですね)、現在大阪の認知度を高めるために世界中を飛び回っているらしいです。

なんでも大阪と世界のスタートアップを結びつけるための Hack Osaka というイベントも開催しているとのこと。来年の2月にも開催を予定しており、世界中からのスタートアップを誘致するべく、海外にも足を伸ばしているそうです。

今年のイベントでは「Moff」という時計型のウェアラブルおもちゃが登壇したのですが、その後キックスターターで資金調達に成功して話題になっています。

Hack Osakaのピッチイベントの模様はYouTubeにありました。

ちなみに1時間半と長時間なので時間のない人はStepUpから直接Moffのプレゼンを見てみてください(モバイルからはあいにく見れません)


ロンドンのスタートアップシーンの印象を聞いたところ「シリコンバレーはちょっと特殊すぎるのでやはりロンドンとかニューヨークのほうが参考になる」とのこと。

前回の日記でも述べたのですが 、ロンドンの場合は金融やファッションといったその都市で強い産業と結びついたスタートアップが人気が高いけれど、シリコンバレーの場合は周辺の町そのものにはあまり購買力がないので、あまりスタートアップに地元との相乗効果を期待していないという点があると思います。

でも大阪はロンドンと比較するよりもどちらかといえばマンチェスターと比較した方が良いのではと思いました。

私の個人的な感覚でスタートアップ都市を並べていくと以下のようになります。

  1. シリコンバレー (唯一無二の存在)
  2. ベルリン、テルアビブ、ルクセンブルグシリコンバレーと対抗すべくテクノロジーに力を入れている町や国)
  3. ニューヨーク、ロンドン、パリ、ストックホルムマドリッド、東京 (経済の中心地であり、既存産業とテクノロジーとの相乗効果を狙っている町)
  4. チリ、トルコ、東欧各国、バーミンガムアメリカの田舎(物価の安さを売りにしている町や国)
  5. マンチェスター、大阪 、その他大勢(あまりスタートアップが進出の候補にはあげない町)

この中でも面白いのはマドリッドやチリでしょうか。それらの町自体の経済圏はあまり大きくないのですが、そこを足がかりに他のスペイン語圏(南米)に進出しやすいのを売りにしていたりします。

正直いって大阪もマンチェスターも#2ほどテクノロジー特化になるには大きすぎるし、#3であるその国の経済の中心都市と真っ向から勝負する力もないし、#4ほど物価も安くない。ではマンチェスターはどうしているか?

ロンドンではオールドストリート地区を中心に政府が「TechCity」というブランド名で宣伝していますが、逆にマンチェスターBBCを誘致するなどして「Media City」というブランド名で対抗しています。

なのでただ単に「ベンチャーのみなさんきてください」というよりも「〜〜系ベンチャーならぜひ大阪へ」といえるようななにかが必要だと思います。

「財団法人都市活力研究所」の方々によると大阪府内には技術力のある町工場が多く、一昔前に携帯の中をあけると大阪の町工場の人たちが作った部品が所狭しとあったそうです。 今だとInternet of Thingsがはやりですが、ハードウェア企業が量産化するときに大阪にきてもらえるようになれば良いなとおっしゃっていました。でも「ハードウェア系ベンチャーならぜひ大阪へ」というと中国との競合になってしまうのですが、価格面だと勝負するのは難しいのでもう少し絞り込む必要があると思います。

ちなみに外国人である私の妻に大阪の印象を聞いたところ「お好み焼き」という返事が返ってきました。寿司や懐石料理は東京や京都というイメージがありますが、お好み焼きやたこ焼きといった「ストリートフード」といえば大阪ですよね。ちなみにロンドンでもランチの時間に小さな路地を歩行者天国にして「ストリートフード」の屋台が建ち並んで人気です。お好み焼きなどの「ストリートフード」、お笑いなどの「エンターテイメント」はいずれも人と人とのふれあいの産物です。関西人は「日本のラテン」といわれるぐらいなので「人情」をブランドとして売り出してもよいかもしれませんね。テクノロジーがどうやってそこに組み込まれていくかはよくわかりませんが、Moffのようなおもちゃとなんかからめていければ良いかなと勝手に思ってみました。

私は生まれが大阪で大学も関西だったので(関西弁はヘタクソですが)個人的に応援していきたいです。

ロンドン起業日記のその後(2014年4〜6月)


(ロンドンの「Social Video Meetup」でStepUpを紹介中)

昨年の7月に起業してほぼ一年経とうとしています。

11月にロンドン起業日記という本を出版してからも3ヶ月おきぐらいに経過報告を書いていました。

もともとはBenkyo Playerというビデオ字幕検索サービスを作っていたのですが、現在はStepUpというビデオの中から興味深い部分のみを抜き出して反復させるサービスをつくっています。「なんのこっちゃ?」という方は私が最近発表したビデオをご覧ください。

話を元に戻して、前回(1月〜3月)のまとめはこんな感じです。

  • ターゲット層をKPOPダンスビデオとカンファレンス関係に変えてみえた
  • 働く場所と人を変えてみた
  • 次のラウンドの資金調達の準備

前回の終わりの方に「資金調達を頑張る」と書いていたのですが、この3ヶ月は本当に資金調達に時間の大部分を費やしてしまいました。結果的には資金調達には成功していないのですが、得ることも多かったと思うので、その事を中心に書いていきます。

1. 資金調達活動
2. ユーザーと向き合う
3. チームづくり



1. 資金調達活動

ラウンド1 スタートアップ

まず最初に取り組んだのはスタートアップの知り合いを紹介してもらい、彼らにStepUpの説明をした後に知り合いの投資家を紹介してもらうという方法です。色んなフィードバックをもらい、好印象をもってもらったところもあれば、そっけないところもありました。 好印象をもってもらったスタートアップの多くに共通して言われたのは、君がやっているようなことだったらアメリカの投資家のほうがアピールすると思うよ、ということです。

なんでもヨーロッパの投資家はB2B(企業向け)ビジネスを好むのに比べアメリカの投資家は個人消費者向けのものを好むからだそうです。この事について自分なりに理由を掘りさげて見ると以下の結論にたどり着きました。

1. 収益より獲得ユーザー数を重視する場合、多額の投資を必要とするが、ヨーロッパの投資家にはそこまでの資金余力がない。 この事は実際にお会いした投資家の人達自身が「アメリカの投資家のほうがポケットが深い」という表現でのべていました。

2. ヨーロッパだとeu内で規制の枠組みが統一されている場合が多いので、b2bの多国籍展開がしやすい反面、アメリカだと州ごとに規制がバラバラ

3. ロンドンの場合は金融やファッションといったその都市で強い産業と結びついたスタートアップが人気が高いけど、シリコンバレーの場合は周辺の町そのものにはあまり購買力がない。そして他の大都市とも地理的に遠い。

面白かったのは「シリコンバレーで資金調達するべき」と提案してくれた人達の多くは、ロンドンを拠点に活動しているにもかかわらず、会社の登記はアメリカになっていることです。 これは、アメリカの投資家のが投資をする際に、自分たちお抱えお弁護士が海外の基準よりも自国の基準で契約しやすいというのも理由にあるのではと思っています。

ラウンド2 エンジェル投資家
スタートアップ経由で投資家を紹介してもらうのは時間がかかるので、それ以外にも自分でからネットワーキングイベントに参加したり、スタートアッププレゼンコンテストに参加したりしていました。
そこであるエンジェル投資家とであったのでその人にフォローアップのメールを送り、なんとかミーティングまでたどりつくことができました。そこで何日もかけて磨きをかけたプレゼンテーションファイルをラップトップから見せようとしたところ待ったがかかりました。

「パソコンなんか開かなくて良い、それよりもビジネスモデルを、どうやってお金をもうけるかいってくれ」。

いきなり出鼻を挫かれた形だったのですが、なんとかしてビジネスモデルを説明しようとしました。途中でその投資家の人も一緒にビジネスモデルを考えてくれようとしていたのですが、ビジネス用途向けのオンラインビデオ編集ツールと考えたその投資家と、大衆向けのビデオキュレーションプラットフォームと考えていた私の間には少し溝があったようです。

ラウンド3 VC
VCは通常億単位の資金が必要な会社を対象にしているので、私達には少し時期が早いかなと思っていましたが、なるべく早い段階から関係を構築したほうが良いと思い、会うことにしました。

まあ通常会おうと思って会える人達ではないのですが、CapitalOnStageというイベントがあり、それに参加すると2社のVCとの面接権がもらえるということで練習がてらにいってきました。

今回は逆にビジネスモデルに関しては一言も聞かれませんでした。それよりも重視されたのは会社のビジョンでしょうか。「Watch YouTube videos in bite sized chunk」というのを会社の一行説明に書いてあるのですが、それはあくまで機能の説明であってビジョンではないですよね。一応それらしいものは頭のなかではモヤモヤしているのですが、まだ一言でスパッといえないのがもどかしいです。

VCの一社の人は丁寧に対応してくれましたが、彼のStepUpに関しての2つの懸念は

1. これってただのYouTubeの一機能じゃないの?
2. キュレーションってスケールしずらいよね。なんとかしてステップを入れる作業を自動化できない。

1に関しては以前にも何度も言われて着続けたことなので、克服への努力はしつつもあまり気にしないようにするつもりです
2に関しては、キュレーションという作業は主観がはいるので自動化はそぐわないと思いつつも、ケースバイケースなので、自動化できそうなことに関しては試して見ようかと思っています。

2. ユーザーと向き合う

資金調達活動に重点を置いていたのと、デザイナーのさゆりさんが日本に帰ってから一人だけの時期があったのが重なり、開発もマーケティングにも力を注げず、結果として3月には盛り上がっていたサイト訪問者もかなり下り坂になっていました。

それでも定期的にダンス関係の新規ユーザーがいる上、少数ながらもリピーターが出来上がってきているのは嬉しいことです。これらのユーザーとは実際にコミュニケーションもとれるようになってきたのですが、面白いのはそのきっかけがバグ報告だったりすることです。 ユーザーの中にはFacebook上で

「StepUpのすべてが嫌い」


というビックリするような書き込みをしてくる人もいました。よく話を聞くと、大量のバグに関することだったようなので、それを一つ一つ直していきました。彼女がそれに満足したかどうかは定かではありませんが、それいこうメールでコンタクトしても返事をしてくれるようになりました。ユーザとコミュニケーションとるにはバグを仕込んでおくのも良い???

またふとしたことから新たなユーザー層を得ることもできました。

資金調達活動の一貫としてmemrise という語学学習コミュニティサイトを運営するスタートアップを訪問した時のことです。そこのCOOに人にStepUpを紹介したら、彼らのブログでStepUpを取り上げてもらうことになりました。するとそこのコメント欄でユーザーの人達が、StepUpの語学学習の利用法について議論を始めてくれたではないですか。しかもそのブログを読んでくれた読者が今でも断続的にStepUpに新規加入してくれています。

StepUpの語学利用は去年も考えていて、自分達のブログで取り上げたり、他のサイトの掲示板に投稿したりしてもなかなか反応がありませんでした。でもほかのコミュニティの中心メンバーに認めてもらえれば、そこから一気に道が開ける可能性があることも学びました。

3. チームづくり

先ほど述べたように一人で活動していた時期には、「チームとして出来上がってないじゃん」、と苦しいことを言われることもありました。しかしながら最近パートタイムでも手伝ってくれる人が2人出てきて、投資さえ確保できれば彼らをフルタイムで迎え入れる用意が出来てきました。そして新たにサマーインターンの人も雇うことになったのでしばらくは4人体制でいけそうです。

「結局資金調達失敗したのにこれからどうするの?」とご心配な方もいるかもしれません。なんでもお金をもっている投資家の人たちは7月から9月まではバケーションに出かけているため、夏場にエンジェル投資家からの資金調達をすることは至難の業なんだそうです。

幸いこれまでケチケチ運営+少人数できたおかげで資金はまだ余裕がある上、少しながら収入の目当てもついているので、ここしばらくは資金調達なしでなんとかやっていけそうです。そこで夏の間はユーザー開拓の方に集中して、9月末には「お〜、StepUpもりあがっているね」と外部の人たちにいってもらえるような状態に持っていきたいです。

Technology Strategy Boardの助成金プログラムについてしらべてみた

以前「イギリスでは助成金がスタートアップの資金源として話題にあがる」と書きましたが、いろんな制度があってけっこうわかりづらかったりします。

私は既にNominet Trustという非政府チャリティー団体からの助成を受けているのですが、そのプログラムも終了したので現在次の資金調達に奔走中です。

ちょうど先週、イギリス技術戦略委員会(Technology Strategy Board 、通称TSB) の助成金プログラムを作成している方に彼らの制度を詳しく説明してもらったので、それを忘れないうちにメモ代わりに書いておきます。

  • IC tomorrow
  • SBRI( Small Business Research Initiative )
  • Collaborative R&D
  • SMART

IC tomorrow

イノベーションコンテスト」という名目で2万5千〜5万ポンド程度の比較的小額を助成する制度。

年に1〜2回ほどテーマを決め、そのテーマにそったパートナーを業界から選んでいるようです。去年は「ゲーミフィケーション」をテーマにGoogle,Sony Computer Entertainment,そしてイギリスの映画館であるODEONらが、より具体的なトピックを提示します。例えばODEONが前回提示したトピックは「映画が始まる前の空き時間、映画のスクリーン、そしてモバイルを利用してなにができるか」でした。

現在開催中のテーマは「Entertainment on the Move」というもので、モバイルを使ったエンターテイメント目的のテクノロジーがテーマです。「音楽」「書籍」「雑誌」「インタラクティブエンターテイメントとゲーム」の4つのカテゴリーに分かれています。私のつくっているStepUpはウェブサイトですが、そのモバイル版の作成に使えないか検討中です。

額が少ない分、比較的融通が利くプログラムで、申し込み要項もフォーム一枚分とかなりお手軽そうです。

SBRI

案件によっては100万ポンドまで支援する大型の助成金です。特徴としてはTSBが対象企業に仕事を依頼する「コントラクト」形式なので成果物がどういったものかをかなり事前に詳しく定義する必要があり、もし事前のプランと成果物がことなったり、ある部分を作成しない場合はペナルティが課される場合もあるらしいです。

現在開催中のものに「Learning technologies design for impact」というのがあります。これは複数に分けて開催され、第1段階では8万ポンドの助成でリサーチ、次の段階でさらに大型の助成金をもとに開発になります。

私は最初これへの応募を検討したのですが、提出書類がかなり大掛かりになりそう、すでに私の場合はアプリがあるのでリサーチ段階をすぎている、そしてあまり事前に成果物を定義しずらい、などの理由で見送ろうかと思っています。

SMART

このプログラムは通称「マッチアップファンド」といわれるもので、プロジェクトの60%までを助成する代わりに、残りの40%は自力で調達する必要があります。
そしてこれもSBRIのように市場調査、プロダクト調査、プロトタイプ作成といった段階ごとに申し込み可能です。

これは特定のテーマといったものはなく、年に6回ぐらいにわかれて開催されるようです。

プロトタイプ作成に25万ポンドも助成してくれるなんて太っ腹ですが、それだけ大規模な案件を対象としているっぽいので私は現在は特に申し込みを考えていません。

Collaborative R&D

このプログラムもSMARTと似たマッチアップファンドですが、パートナー企業や大学とのコラボレーションを基本としているところが大きな違いです。
私は申請する予定がなかったのですがちょっとどんなテーマがあがっているのか調べてみました。

なんかタイトルを訳すだけでも苦労しそうな大変難しそうなトピックばかりです。

まとめ

以上が概要です。助成金制度はいろいろあるのですが「小額助成金、政府との契約案件、マッチアップファンド」の3種類があると考えればすっきりします。
でもいろいろあるプログラムに申請するのはなかなか骨が折れるものです。特に助成額の大きな案件は申請書記入するだけでもかなり骨が折れるし、ビジネスプランをかなり細かいところまでつめないといけないようです。

競争率もなかなか激しいので「申請代理コンサルタント」みたいな団体もいろいろあります。前払いしなければいけない団体とはあまり関わりたくないのですが、成果報酬型(助成金のxパーセント)とかだとリスクも低いので悪くないかなと思います。ちなみに申請代理コンサルタントではGrantTreeという団体が有名らしく、彼らのサイトの中にもイギリスでの資金調達の種類についていろいろ詳しく書かれています。

ヨーロッパの投資環境(Grants, SEIS, Equity Crowd Funding)

ヨーロッパの投資環境(Grant, SEIS, Equity Crowd Funding)を、実際に資金調達するスタートアップの目線からいろいろ調べてみました。

  • これまでの経緯
  • 助成金 vs SEIS (Seed Enterprise Investment Scheme
  • VC vs Crowd Sourcing vs エンジェル投資家
  • 私のアタックプラン

これまでの経緯

Benkyo Player LTDという会社を7月に設立してからはや10ヶ月経ちました。
これまではBethnal Green Venturesというシードアクセルレータから得た投資資金とNominet Trustから得た助成金でやりくりしてきました。

(詳しい経過は「ロンドン起業日記」を買って読むなり、この日記の過去ログを見てください)。

現在ほぼ一人でやりくりしているので資金的にはまだまだ余裕があります。
しかしながら個人プレーで続けるのにも限界が近づいてきているので、ここであらたな資金を注入してちゃんとしたチームとして活動しようと考えています。

そこでこの1ヶ月ほどいろいろ投資としてどういったオプションがあり、自分にはどれがあうのか調べてきたのでそれの途中経過報告をしたいと思います。

助成金 vs SEIS (Seed Enterprise Investment Scheme


通常イギリスのスタートアップ界隈で、3F(Friends, Family, and Fools)の次の段階の資金調達手段としてよく話題にあがるのが助成金(Grant)と
SEIS (Seed Enterprise Investment Scheme)を利用した個人投資家からの資金調達です。

助成金に関してはTechnology Strategy Board(通称TSB)という機関が中心になって多くの助成金プログラムを運営しています。「助成金」というとお固いイメージがつきまといますが、バイオケミカルといった分野からゲームなど本当にさまざまで、額も2百万ポンド(3億5千万円)をこえるような大型なものまであります。そして助成金はすべてが国からという訳ではなく私が助成金を受けたNominet Trust(.ukドメインの収入をもとに運営をする)のような非営利団体のものもあります。Innovate UKというところにいくといろいろなプログラムを検索可能ですし、なかにはGrant Treeといった助成金申請のコンサルティングで糧を得ている会社もあります。

SEISは逆に個人投資家から資金を得やすくするための税制優遇策です。

優遇策は主に三つあります。 詳しくは政府のサイトをみてもらえばよいのですが、要約するとこんな感じです(これをみて投資しようとした英国在住日本人の方は私の言葉を鵜呑みにせず原文を参照してくださいね)。

  • 所得税優遇(Income Tax relief) = 投資額の50%分を所得税から相殺
  • キャピタルゲインの優遇(Capital gains re-investment relief) = スタートアップが買収されるなどして、株の売却益を得た場合、その分を再投資にまわすとキャピタル・ゲイン税を払わなくてよい
  • キャピタルロスの優遇(Capital gains disposal relief) = スタートアップがつぶれた際の優遇措置なんですがちょっとよくわかりませんでした。どなたか詳しい人に教えてもらいたいです。

特に1番最初の「投資額の50%分を所得税から相殺」というのが事実上「投資額の半分はかえってくる」ことになるのがこの優遇策の一番のポイントだそうです。

ちなみ制限としては

  • スタートアップ企業がこれで調達できるのは£150,000(2千5百万円)以内
  • 投資家ごとの投資上限は£100,000以内(千7百万円)
  • この制度に合致するスタートアップは「設立2年以内」「従業員25人以内」「総資産 £200,000(3千4百万円) 以内」などいろいろ制限がつく

この制限に合致するためには申し込みをしなければいけないのですが、申し込み用紙は1枚だけなので非常に簡単です(私も現在申し込んでいて結果待ちです)。

スタートアップとして助成金とSEISの両方を狙う人が気をつけなければならない落とし穴が1点あります。

That figure of £150,000 must also take account of any other State Aid received by the company in the three years preceding the relevant share issue which is de minimis aid according to EU regulations.

http://www.hmrc.gov.uk/seedeis/how-to-qualify.htm より

£150,000の上限は他のState Aid(たぶん公的補助金のこと)もいれた総額らしいので政府からの補助金を3年以内に受け取った人はその分だけさっ引く必要があります。ちなみに私の助成金は公的機関からではないのでセーフ.

VC vs エンジェル投資家 vs Crowd Funding

で、だれから調達するかなのですが、通常だとVC(ベンチャーキャピタル)からの億単位の資金調達を連想するかもしれません。しかしながら私のような少ない人数でやってきた会社が、いきなり多額の資金を調達しても無駄遣いすると困るので時期尚早かなと思います。でも一度、エンジェル投資を受けた先輩起業家の方とお茶したときに「VCでも最近少ない額から投資するところも出てきたし、そもそも投資家との関係は早いうちから構築しておいたほうがよい」とアドバイスをいただいたので一応調べてみることにしました。

ヨーロッパのVCとか全然しらなかったのですが、調べているうちに面白いイベントを見つけました。「Capital On Stage」というカンファレンスではスタートアップがプレゼンするだけでなく、VCの代表者たちが5分間のプレゼンをするそうです。その模様は録画されてYouTubeでも視聴可能です。

昨年ロンドンであったイベントを視聴してみたのですが、VCの人たちってあまりプレゼンする側にまわる機会がないせいか、意外としどろもどろになったり、カンペよみながらする人たちがいたりして逆に面白かったです。

今年はロンドンはないそうですが、5月にベルリンであるそうです。参加スタートアップ企業は「シリーズA」と呼ばれる億単位の資金調達活動をしているところが多いので私には敷居が高そうですがだめ元で応募してみました(参加するだけなのにいろいろ審査があるんですよね、このイベント)。

で、次にあたるべきなのは「エンジェル投資家」と呼ばれる個人投資家なのですが、そんなにお金持ちなんて知らないのでどうすればよいか悩んでみました。ちまたには「エンジェルネットワーク」と呼ばれるエンジェル投資家と起業家とを結びつける団体や、斡旋してくれる会社もいるのですが、結構お金をとってきます。

「起業家からお金を要求する団体ってどうなんだろう」と思い、私が投資を受けたBethanl Green VenturesのOB/OGや関係者が所属するメーリングリストで相談したんですが「そもそも金のない起業家から金をぼったくるところは信用するな」派と「ネットワーキングにはお金かかるんだからある程度のお金を払うのはしかるべき」派の人に分かれていました。

先ほど相談した先輩起業家の方に「どこでそんな投資家と知り合ったの」と聞くと「なんかのディナーで知り合って意気投合した」とのこと。

イギリスはパブ文化で飲むだけのネットワーキングイベントが多くて辟易するのですが、レストランでの食事とネットワーキングイベントが融合した「Table Crowd」というイベントは、興味のある業界の人たちと知り合うチャンスを作りやすく、居酒屋文化からきた私にはうれしいです。もう3回も参加して、いろいろコネクションができたりしました。ここでのネットワーキングの成果が投資活動にも反映されればよいのですが。

そして最後にクラウドファンド。 クラウドファンドというとアメリカにある「Kick Starter」といったプログラムが有名ですが、これらは投資というよりも「気になったプロダクトやアーティストのパトロンになることで先約売買権を確保する」という意味合いが多いのです。しかしイギリスでは投資先の株も得ることができるEquity Crowd Funding というのがあります。 最近雨後の筍のようにいろいろ出てきているのですが、有名なのは2011年から行っているCrowdCubeと2012からと出遅れたもののFSA( Financial Services Authority)の認可を得ることで「イギリス発」の称号を得ているSeedrが有名です。

両者の比較記事をネットを検索したり、人から聞いたことをまとめると以下のとおりです(確認していない情報もあるので鵜呑みしないでくださいね)

  • CrowdCube経由だと議決権のない株式をもらえるが、Seedrだと株式はもらえない代わりにSeedrがProxy(代理)となり代わりに議決権を行使できる
  • 手数料はCrowdCubeのほうが安い、でもすでに他のエンジェル投資家がいる場合、Seedrはその分を手数料から免除するけれどCrowdCubeは一括で請求してくる
  • Seedrを通すとヨーロッパ全域から投資を募ることができるけれどCrowdCubeでは各国の支店の連携があまりできていない
  • 登録されている投資家の数はCrowdCubeのほうが多い

といった感じでしょうか。

あと両者に共通することですが、投資家用の資料をアップロードすれば投資家がよってくる訳ではなく、いかに早く投資額の30%分をクリアできるかが資金調達の鍵だそうです。そこであらかじめ自分の足て投資家を集めるおいて、クラウドファンドで自分のファンドの告知をした時にはすぐに何割が埋まっている状態にするのがこつとかなども教えてもらいました。

私のアタックプラン

そこで私のプランです。 
いきなりクラウドファンドを募るのも考えたのですが、まずは自力でエンジェル投資家の人たちを見つけ出し、もし目標額調達できなさそうだったら補足分だけCrowd Fundingで調達しようかと思っています。 まあエンジェル投資家とか全然知らないのですが、これから1〜2週間ほど先輩起業家の人たちをいろいろ訪問して投資資料に目を通してもらいつつ、彼らの知り合いのエンジェル投資家を紹介してもらいつつ、いろいろなイベントにこまめに出て発表していこうと思っています。 もしこの日記をご覧になった方で「イギリス(またはヨーロッパ)在住の知り合いでスタートアップ投資に興味ある」かたをご存知でしたら@makoto_inoueまでご連絡いただけるとうれしいです(もちろん日本人であるかどうかは関係ありません)。

4月22日追記:日本人でもイギリスのクラウドファンド参加可能か調べてみました。Seedrは「EU在住に限る」とあるのですが、CrowdCubeの方はスタートアップ側で支払い方法を選択していれば可能らしいです。

ロンドン起業日記のその後(2014年1~3月)


(この3ヶ月お世話になっていたGeckoboardのダッシュボード画面)

これまでの経緯

Benkyo Player LTDという会社を7月に設立してからはや9ヶ月、そして現在注力している反復学習ビデオプレーヤーStepUp.ioを作り始めてから半年経とうとしています。詳しい経過は「ロンドン起業日記」を買って読むなり、この日記の過去ログを見てもらえば良いのですが、かいつまんでいくとこんな感じです。

  • 2013年8月にハッカソンで反復学習アプリStepUp.ioを作り上げる
  • 2013年11月にサイトオープン。日本までもどってTech Crunch Tokyo Startup battle に参加したりする
  • 2013年12月にアメリカのソーシャルニュースサイトであるredditに投稿してプチヒット

年末に書いたエントリーでは「訪問者数増加や新規ユーザーというのは機能追加に関係なくマーケティング次第で増加は可能だけれど、リピータがあまりいないのでマーケティングの手を緩めるととたんに元に戻る」というのが最大の問題だと書きました。そしてその対応策を披露するはずだったのですが時間が経つのは早いものですぐにまた3ヶ月たってしまいました。そこで年初から何をしていたかを振り返るとともに、次の3ヶ月の目標をたてて行きたいです。


3つの変化

お正月に読んだブログかなにかで「自分自身を換えることは簡単にはできないけれど、自分の周りの環境を変えることは可能」みたいなことを読んで「なるほど」と思い、それを結構愚直に実践しました。特に行なったのは以下の3つです。

  • 「働く場所を変える」
  • 「ターゲット層を変える」
  • 「働く人を変える」

働く場所を変える

年末まではBGV(Bethnal Green Ventures)というインキュベーション施設がオフィススペースをただで提供してくれていたのですが、それも年末まででした。一緒にそこで働いていたスタートアップの多くは、その後も一緒に働けるオフィススペースを探し出し、引き続き同じメンバーで仕事をしています。私もお誘いがかかったのですが環境を変えたいと思い断りました。その時に同じくLondonでウェブエンジニアとして働いているたつやさんから「うちのオフィスはデスクがいくつか空いているから、2〜3ヶ月ぐらいの間だったら安く貸し出せるよ」とお誘いを受けました。「同じレベルにいるスタートアップと机を並べるより、自分たちより2〜3歩先をいっているスタートアップと机を並べる方が得るものは多い」と思い渡りに船とばかりに承諾しました。

そのスタートアップはGeckoboardといい、多くの分析データを1つの画面で共有するスタートアップです。会社が始まったのは2013年で、最初は創業者の人が一人で始めたそうです。現在では15人を超え、多くの優良企業を顧客に持ち、ベンチャーキャピタルからの大型の投資も受けた、ロンドンでいま注目なビッグデータ関連スタートアップの1つです。

「訪問者数増加や新規ユーザーを見ているだけで良いのか?」と疑問に思っていた時だったので、データ解析の専門家に囲まれながら仕事ができるのはすごく勉強になったし、たつやさんには色々悩みを相談することができて良かったです。

結局ここも3月の終わりには出て行かなければ行けなくなったのですが、次に移る場所もここで得た人脈を元にゲットしまいした。


「ターゲット層を変える」

年末まではRedditを通して単発で人は訪れるのですが、なかなかリピータがいないのが問題だったので、年初からはターゲットをいろいろ絞ってみました。

まず1月はギターを練習している層に向けてまたredditなどを使いアピールして行きました。すると1月の半ばぐらいにイギリス人の著名ギタリストの人が「StepUp.ioギターの練習にいいよ」とfacebooktwitterで告知してくれたおかげで、一晩に600人ぐらいの人がサイトを訪れてくれました。一日の訪問者数が20〜30人ぐらいでちょろちょろしていた時期なのでこれはすごいことです。しかしながらその後がなかなか伸び悩んだ上、http://soundslice.com や http://chordify.net といった競合サイトをいくつか発見しました。通常競合はあまり気にしないようにしているのですが、上の両者はギターの練習に特化していて、ミュージックビデオから楽譜を自動生成してくれる機能などはとてもじゃないけれど太刀打ちできません。

「どうしよう」と思っていたところに第2のブレークが訪れました。年末からフィリピンの女子大生をやとってStepUp.ioのユーザーテストをしてもらっていたのですが、彼女にゲストブログを書いてもらうことにしました。彼女はギターやピアノの練習などでStepUp.ioを使っていたのですがブログではKPopグループ「少女時代」のダンスの練習について書いてもらい、これをまたまたredditに投稿したら一晩で1000人近い訪問客が訪れました。しかもこのブログを書いた直後ぐらいに少女時代の新曲がリリースされました。新しい曲がリリースされた直後は、みんなが一時もはやくダンスの振り付けをマスターしようと思っています。そこで振り付けされた曲をいちはやくStepUp.ioに載せたりなど、KPopダンス層にアピールできる曲を自分たちで追加することでリピータを増やそうとつとめました。

年末にJPopやボカロをターゲットにした時にはなかなか食いついてもらえなかったのですが、KPopは英語情報がたくさんあるせいか、比較的みんなStepUp.ioに抵抗なくサインアップして自分のお気に入りの曲を追加してくれました。なかには2分の曲を5時間にわたって繰り返しているユーザーもいたりしてなかなか有望そうです。

そこで2月の終わりから韓国人の方をやとってKPop分野を充実するようつとめています。

そして3月になってKPopと平行してさらなる分野を開拓中です。それは「カンファレンスビデオ」。私はカンファレンスに参加するのが大好きなのですが、自分が行けなかったカンファレンス、また行っても見ることができなかった講演などがあったりします。そういった講演をビデオで収録したものが後日出回ることが多いのですが、1時間以上するビデオを見る時間はなかなかなかったりするものです。そこでStepUp.ioを使って60分のビデオを10分に短縮したバージョンを作ったり、目次的な使い方ができることをアピールするようになると3月ぐらいからブログで色々取り上げられるようになりました。1月には1つのブログでしか取り上げられていなかったのに3月だけで急に19ものブログで取り上げられました。しかも面白いことに英語のブログは2〜3で、あとはスペイン語、フランス語、イタリア語、日本語、韓国語と雑多です。

働く人を変える

11月からインターン生を雇っていて、3月に契約更新を控えていてどうしようか迷っていました。しかしながら私のメンターから「Hire fast, Fire fast」(素早く雇い、素早く首にする)というアドバイスを貰い、更新しないことにしました。11月から頑張ってくれてはいたのですが、私の求めている役割と完璧にはマッチしていなかったので、惰性で雇い続けるよりはっきり「こことこことここの部分が足りないから申し訳ないけれど雇い続けることはできない」と説明すると納得してくれたようです。雇用というのはその人の人生を左右することなので簡単な気持ちで行なうことはできません。そして足りない部分があっても成長して補ってくれる可能性もあります。それでもなお人に「もうこなくて良い」というのはなかなか難しいですね。

あと6月からいろいろデザインを手伝ってくれていたさゆりさんも日本に帰国することになり、代わりのデザイナーも必要です。こちらもまだ代わりの方は見つかっていないのですが継続して人を捜しています。今ロンドンは景気もけっこう良く、とくにスタートアップはたくさん出てきている状況なので私のようなちっぽけな会社に対して優秀な方に注目して貰うのはなかなか大変です。

これからの3ヶ月

あと3ヶ月で会社創立1年になります。StepUp.ioを一般公開してから4ヶ月ちかくたち、少ないながらも使ってくれている人もいるし、ブログにも書いてもらえるようになったのでそろそろ次のラウンドの資金調達を考えています。

イギリスにはSEIS(Small Enterprise Investment Scheme)というスタートアップ向けの税制優遇策があります。スタートアップは15万ポンドまでこれをつかって資金調達可能で、投資家は毎年10万ポンド(千六百万円ほど)まで税制優遇を受けることが出来るます。具体的にはどういった税制優遇策かあまり勉強していなかったのですが、なんでも投資後3年以内にキャピタルゲインがあった場合に税金がかからないだけでなく、もしスタートアップ企業が倒産した場合も50%まで補填があるとか。これが知人のいうところ「今世界で一番おいしい投資家向けのプログラム」なんだそうです(まだ勉強中なのでまちがっているかもしれません。もうちょっと勉強したらまた詳しく書きます)。

イギリスの税制は4月にきりかわるので、今年の分のSEISはみんな使い切ったと思うのですが、4月の半ばから2014/15 年度の投資枠が空くらしいのでそれをめどにエンジェル投資を募っていこうと思います。いままでうけた投資や助成金は申し込み用紙に記入するだけでした。これからは自分で投資家探しをしたり、投資用の資料を作成したりと未知なことばかりですが、がんばっていこうと思います。

データで振り返るStepUp.ioのリアルな3ヶ月

これまでの経緯

Benkyo Player LTDという会社を7月に設立してからはや半年経とうとしています。詳しい経過は「ロンドン起業日記」を買って読むなり、この日記の過去ログを見てもらえば良いのですが、かいつまんでいくとこんな感じです。

  • 2012年11月のハッカソンで動画字幕検索アプリであるBenkyo Playerのプロトタイプを作りあげる
  • Bethnal Green Ventures というシードアクセラレータに応募、2013年7月からサイトを本格的に作り上げる
  • 2013年8月にMVP(Minimum Viable Product)を作り上げるも全然ユーザー数が伸びず、BGVの人からもピボットを勧められたりする
  • 2013年8月いハッカソンで反復学習アプリStepUp.ioを作り上げる
  • 2013年9月にBGVは終了。Nominet Trustという団体の助成金にうかる

2013年9月の自己採点は「10%」、その時の自己分析は以下のようになります。

  • 見込み客に聞き取り調査をしたとき「使いたい」と言われたけれど、実際にMVPをつくっても「使って」もらえなかった
  • コードを書いてばかりなのとB2C か B2B かに絞りきれておらず、ユーザが誰かの定義が曖昧、よって獲得活動が十分ではなかった
  • たまに使ってくれるユーザーもBenkyo Player の目玉である「検索機能」を全く使ってくれていなかった。

最後の「検索機能を全く使ってくれていなかった」ことは致命的だと思いBenkyo Playerはひとまずお休みして、StepUp.ioに注力することにしました。

その時にしようと思ったことが3つあります

  • 常にデータをとり、「毎週10%の成長率」を達成しているか確認する
  • マーケティングファーストの姿勢。自分のサイトが使いずらくても ガンガン人に「使って」、というのをためらわないようにする
  • ユーザビリティテストを頻繁に行なう

特にマーケティングに関しては「エンターテイメント分野にまず売り込み、最終的に 教育目的としても使ってもらえるような戦略」なども考えていました。

データを取ることに関してはGoogle Analyticsのデータや自前のログ解析システムをつくったりして毎週のようにデータを分析していました。
そこでそれらのデータとともにこれまでの3ヶ月間を振り返っていきたいと思います。

ユーザー訪問数(Unique Visitor)

まずは週単位のユーザー訪問数です。
これだけを見ると「11月後半までは週10%をこす勢いでのびていたけれど12月にスローダウンしている」ということが読み取れるように思います。
しかしながら実際には日単位でみるともっと複雑だということが見て取れます。

これも11月の終わりに大きなスパイクがありますが、それ以外にも小刻みなスパイクがありますよね。
今回は実際にMVPが出来上がって一般公開したのは12月の始めだったのですが、それ以前から「マーケティングファースト」の姿勢を貫くためにスタートアップ関連のイベントにでて宣伝活動を行なっていました。以下が各イベントに参加した日付です。

マーケティング(リアル)

「サイトに人を呼び込む」という意味で一番宣伝効果が多かったのはTechCrunch Tokyo のスタートアップバトルに出場したことでした。逆にほとんど効果がなかったのが10月末にケンブリッジで行なわれたMosaic3DXという3Dやゲーム関係者にむけて行なわれたイベントとニコニコ会議でした。前者に関してはブースに出店して、来場者あてにデモンストレーションをしていたので実際には多くの人の目に触れたはずです。しかもその場で興味を持ってくれた人にはアカウントまで作成したのですが、そのイベントのあとに実際にStepUp.ioまで訪れた人たちは少なかったようです。ニコニコ学会は会場の人数は少なかったものの、ニコニコ動画を通して1万人以上の目に触れたはずなのに全然サイトには訪れてくれませんでした。「捗る」「これはいい」といったコメントが乱舞していた割には非常に残念な結果です。しかしながら「いい」と言ってくれる人が必ずしも使ってくれるとは限らないというのはBenkyo Playerですでに経験済みなのでそんなに落胆はしていません。

こういうイベントに出ていて思ったのですが、スタートアップ関連のイベントは華やかなんですが、そのうちのどの程度が実際の見込み客にあたるのかはちょっと不明です。本当はギター初心者や語学初心者が集まるイベントで発表できれば良いのですが、そういうのがどこにあるのかまだ見つけていないのが現状です。

マーケティング(ネット)

実はユーザー訪問数が劇的に伸びたのはイベントで話すのよりもネット上での広報活動によります。

まず最初の山「Lux Super Rich」ですが、ちょうどこの頃「LとRの発音を練習するにはLux Super Richを繰り返すのが一番」というツイートが2万回以上リツイートされたことが話題になりました。そこでLux Super RichのビデオをStepUp.ioに取り込んで、それをそのツイートした方に見せたところ、リツイートしていただいたり「洗脳アプリ」といったコメントなどをいただくことで、結構訪問数が増えました。

2度目の山はRedditというアメリカ発のソーシャルニュースサイト(どちらかというと掲示板に近いです)。オバマ大統領が質問を受け付けたりしたことなどでも有名で、日々の訪問者数が200万を誇る怪物サイトです。ちょうど11月の始めからインターンの人を雇ったのですが、彼がRedditを使い込んでいるらしく、最初はクッキング系やゲームの解説などのスレッドにStepUp.ioに関して投稿していたらそこそこの訪問客がそのサイトから訪れました。そこで色々なジャンルを試したところ「HALLELUJAH」というギターの練習ビデオが当たって、かなりの数の訪問者数を呼び込みました。

このRedditを通したプロモーションに関しては3点学習したことがあります。

一点目に、今までYoutubeのコメント欄やツイッターで個別に書き込みをしててもあまり効果がなかったのですが、こういう興味のある人がたまっている場所に投稿するのは効果があるということ。でも同じスレッドに何度も似たような書き込みは出来ないのでそう何度もできるものではないかもしれません。言ってみれば焼き畑農業みたいなものでしょうか?火は出るけれどずっとは出ないし、常に場所を移動し続けなければいけないという点でピッタリな形容かと思います。

二点目に重要なのは「2〜3ヶ月もかけて自分のアプリをMVPまで持っていかなくとも、自分が解こうとしている問題に需要はあるか、というのを調べることは可能」ということです。
なぜならRedditの書き込みのタイトルは「Use youtube for learning songs this makes that a lot easier」(Youtubeを使って歌を習うのにこいつを使うと簡単だよ)というもので、書き込み自体にはアプリの画像もなければ詳しい説明もありませんでした。要はこの書き込みを読んだ人たちは「youtubeで歌を学習するための効率的なツールがあるか」ということに反応したからです。 「自分の抱えている問題に同意してくれる人は多い」と安堵する反面「でもこれだけだったら9月ぐらいにテストできたよね」と反省しきりです。というのもStepUp.io自体はクッキングから語学学習からいろいろ応用範囲は広いのですが、その分ユーザーインターフェースが特定の分野に特化できてない中途半端なものになってしまったと思うからです。9月の時点でどの分野に集中するか(ギター)決めておいて、それだけに特化した機能をつけていくことで開発の無駄を省けたのではと少し後悔しています。

三点目ですが、ユーザー数というのはマーケティングに時間をかければ増やすことができるけれど、リピーターがいないとあっという間に元に戻ってしまうということです。12月に訪問者数が減ったのは端的にそれを示しています。というのもクリスマスにかけて私もインターンの人もマーケティング活動をしなくなると、「これまで週10%以上の割合で増えていた」と思っていたユーザー数があっという間に元にもどってしまったからです。

新規獲得ユーザー

新規獲得ユーザー数もページ数に比例して伸びているようには見えます。でも肝心なのは「訪れたユーザーのうち何人が新規登録してくれたか」のコンバージョンレートだと思います。

それを表したのはこちらです。

二つほど大きな山がありますがこれはMosaic3DXなどのリアルなイベントにいった際、私がその場で説明して興味を持ってくれた人にアカウントを即時発行していたからです。
この時獲得してくれたユーザーの中には、メールやツイッターで使い勝手などについてフィードバックをくれる人が何人かいて重宝しています。やはり直接ユーザーに話しかけるという行為は重要だと再認識させてくれます。

11月半ばまではそもそも招待制だったので浮き沈みが激しいのですが、12月にβオープンしてからは大体1.5%から3%ぐらいのコンバージョンレートをうろちょろしています。

その他試したこと

  • ボカロ

「エンターテイメント分野にまず売り込み、最終的に 教育目的としても使ってもらえるような戦略」を実践に移すため、ニコニコ動画でボカロ(ボーカロイドというサンプリングされた人の声をもとに歌唱曲をつくるソフトウェア)に振り付けをつけて踊る人をターゲットとする方法も試してみました。具体的には歯茎ピペットというダンスユニットのメンバーであるあきゃりさんの協力の元、踊り手の人たちが集まっている場所(代々木公園)にいって実際にデモしたりしました。ここでも実際にサイトを見せた時は「これイイ」と言ってくるのですが、なかなかリピータとして定着してくれません。1つの仮説としては「ボカロの曲を練習する多くは女子中高生が多いのだけれど、彼女達は英語のサイトに怖がって近寄ってもらえないのでは」ということです。

  • クリスマスコレクション

クリスマスに向けたいろいろなハウツー系をまとめたものを「クリスマスコレクション
としてまとめたのですが、あまり効果はありませんでした。このコレクションにたどり着いてから新規登録してくれたユーザーはログを見たところまったくいないようです。
せっかくクリスマス用のバナーまで作ったのに!!

  • デモビデオの作成

今までのホームページにあるビデオは私がどこかのイベントの発表用に作ったものでかならずしもユーザーに向けて作られたものではありませんでした。
そこでちょっとお金を奮発してプロをやとって専用ビデオを作成してみました。


まとめ

ここまで分析してふたつのことに気づきました。

  • ボカロ、クリスマスコレクションといった突発的なマーケティングプランや、サイトを良くするための機能追加で訪問者数増加や新規ユーザー獲得に結びついたものはあまりない
  • 訪問者数増加や新規ユーザーというのは機能追加に関係なくマーケティング次第で増加は可能だけれど、リピータがあまりいないのでマーケティングの手を緩めるととたんに元に戻る

そしてさらに思ったのは「訪問者数増加や新規ユーザーを見ているだけで良いのか?」ということです。週10%の成長率と2〜5%のコンバージョンというのは一見悪くないように見えますがあまり長期的なサイトの魅力向上に貢献しているように思えません。というかそもそも「StepUp.ioの魅力」とはなんでしょう?そもそもそれを聞き出すためにリピータをなんとか増やそうと躍起になっていたのですがなかなか思うようにいっていないのが現状です。学校とかで使ってもらおうと知り合い経由で何人かの先生に頼んでみたりもしたのですが、あまり興味がないのか「忙しい」となかなか相手にしてもらえていません。「実績がない」と「魅力を分かってもらえない」という鶏か卵かの問題を行ったり来たりしているような間隔にとらわれてしまいます。


みなさんならこの状況をどう打破できるでしょうか?一応対応策をひとつふたつ仕込んではいるのですがそれを述べる前に皆さんのご意見をお聞きできれば嬉しいです。でも持論を展開する前に一度 http://www.stepup.io を使ってみて下さいね。

ニコニコ学会はガラパゴスか?

ガラパゴス」というとガラケーを代表に否定的なイメージがつきまといますが、あえてタイトルにつけてみました。
この文章では「尖っていて、ユニーク」な良い面と「島国的で隔離された」課題面の両方を表しています。

今日はちょうどニコニコ学会開催から1週間たちました。ニコニコ学会についての感想ブログがちらほらでてきたのに加え、今日は参加者、登壇者によるアフターパーティーの日です。
本当は参加したいのですが東京にいないため参加できません。そこで今回のブログを通して、少しでもみなさんの議論の糧になれば幸いです。

1. 私の立ち位置

ニコニコ学会がガラパゴスかどうかを論じる前に少し私自身のご紹介。

私はイギリスのロンドンに滞在して9年になります。外資系金融や小さなソフトウェア会社で8年ほど働いた後、今年の7月に起業しました。
今年の10月にTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルというイベントに参加するため東京に滞在した際、ニコ動やボカロのことを色々学びました。その延長としてニコニコ学会のことを知り、次回の開催がちょうど年末の一時帰国の日程と重なっていると知ったのはマッドネスの一次応募締切のちょうど当日でした。

おかげさまでニコニコ学会には生で参加できただけでなく、研究してみたマッドネスに「学習としての動画可視化」という題で実際に登壇できたのは貴重な体験でした。
学会終了後の打ち上げで主催者の江渡浩一郎さんとちょっとだけお話しした際「どうやったらニコニコ学会をもっとよくできるんだろう」といった趣旨のことを首をかしげながらしきりにおっしゃっていたのが印象的でした。そうなんですよね、会の主催者として長く関わっているようになると「外からどのように見られているか」といった視聴者の視点というのがわからなくなってしまいます。自分では当たり前だと思っていたことが見る側に全然伝わっていなかったり、まったく違う意図にとられていたりすることもあります。そこで「ニコ動」という文脈からも「日本」という文脈からもかなりかけ離れた位置にいる私の感想を共有することで、会の運営者の方々の今後の参考になるのではと思いました。 気分的にはガラパゴス島をおとずれたダーウィンの心境でお読み下さい。

2. 尖っていて、ユニーク、でも地に足がついている

私が今回一番楽しんだのは「研究100連発」、次が「研究してみたマッドネス」でした。

「研究100連発」の濃度の濃さは他のカンファレンスに類を見ないのではないでしょうか。 登壇された先生方は各分野の超一流な方々ばかり。その先生方が自分の研究の歴史を振り返りながら、最先端の研究に至るまでの道のりをテンポよく、しかも初心者にも分かりやすく説明してくれました。特にトップバッターの伊福部達先生が「研究してみたけど全然わからなかった」「研究すればするほど謎は深まるばかり」と正直におっしゃっている箇所が非常に新鮮でした。お偉い先生らしくない。研究の初期の失敗の積み重ねが、後の研究の成功のための糧となる過程を凝縮してみることができるのは「研究100連発」の醍醐味だと思いました。見ていた私ですら「ひょっとしたら今全然ものになっていないものでも、継続し続ければなんとかなるかも」という気にさせてくれました。

次の「研究してみたマッドネス」は自分自身が登壇したということでまた別の楽しみが味わえたと思います。

今回も「全力で彼女をつくる」や「インターネット内の住人が実世界に送り込むアバター(実体)を開発している」などのハードウェア系のハックやOculus Riftを用いた拡張現実的なハックなど、難易度が高そうな発表が多かったようです。Oculus Riftに関してはゲームを使ったデモを実演しているのをロンドンのイベント会場で一度目にしましたが、日本人の手にかかるとあっという間にミクさんと添い寝したり、抱きついたりできるようにするまでハックする野生の研究者達すごすぎです。
先月Tech Crunch Tokyo にいた時に思ったのですが、ハードウェア系のハックは日本は海外の1〜2週先を回っているなという気がします。だいたいハードウェア系のハックといえば「AudrinoかRaspberry Pieを使って何かしよう」となるのが海外(私の知っている例はイギリスだけですが)ですが、日本、特に東京だと「秋葉原にいってパーツ買ってきて1から作る」なので基礎からして圧倒的に日本が優位かなと思いました。

たぶん今回もっとも尖っていたのは「きのこ会議」だったのではないでしょうか? あいにく次のマッドネスの準備のために私はライブでほとんど見ていなかったのですが、ニコ動のコメントがひたすらきのこ会議の話題で持ち切りでした。「いきものマテリアル」のセッションもそうなのですが、ウェブ系、工学系が中心であろう今回の学会の視聴者になじみがないトピックを面白く、分かりやすく紹介してくれたという点でニコニコ学会は他の会議やカンファレンスとは一線を画す存在ではないかと思いました。

肝心の私のトークなのですが、周りの度肝を抜かれるトークに比べて非常に地味だったと思います。
今回の「研究してみたマッドネス」のトピックが「見る、見られる」だったのでひょっとしたら私の動画反復アプリについてのトークも採用してもらえるのではと思って応募しました。過去のトークにロボットとかすごい人たちばかりでていたので、あのトピックでなければ応募していなかったかもしれません。

話してみた実感ですが、3分は本当に短い!! 練習では2分30秒で収まるように何度も練習していたのですが、本番では時間切れになってしまいました。

ニコニコ動画のコメントがリアルで流れる点を意識して「コメントって意味ないですよね」と煽るセリフをいれて、コメントとのリアルでのやり取りを期待したのですが、自分が話している途中は画面に流れるコメントに気を配る余裕は全くありませんでした。でも最後に自分のトークが終わった後にちょろっと流れていたこのコメントだけは目に入りました。

2013 12/21 7:46:02 内輪っぽくない野生の感じがよかった


確かに。他の登壇者と色々話す機会があったのですが、皆さん別のイベントとかでつながっている場合が多いのですよね。ちょっと「内輪の集まり」的においがしました。そういう意味では『東京タヌキ探検隊!東京コウモリ探検隊!』の宮本拓海さんと私は「マッドネス」の幅を広める役目は果たせたのではないかと思います。

審査結果で選ばれる最後の4組に私は箸にも棒にもひっかからず、当初は「やはり度肝を抜くような新規性やユニークさがないからだ」と思っていたのですが、それだけではなかったと思います。学会の後の飲み会の席で、隣り合わせた審査員の方から「井上さんのトークで残念だったのは、実際に実験してみた後の調査結果に触れられていない点でした」とのコメントをいただき、まさにその通りだと思いました。私は自分のアプリの紹介にばかり気がとられ、実際にそれがどう使われているかについての説明が不十分だったと思います。他の方々はたとえ数人でもいいから実際に作品をつかってもらった感想や気付きを述べていました。そういう意味では『 Twinkrun:環境に溶け込む拡張現実感を用いたゲーム』のpoyoチームが「自分の色を知るには、相手のカードを見るだけではなく、相手の(自分の色を見た後でとった)行動
を通して初めて可能」という観察結果を元にした知見を延べ、またそれが評価されてpoyoチームが最終選考まで残りました。この点は、ニコニコ学会が地に足の着いた存在として、非常に評価されるべきだと思います。

3. 島国的で隔離された

そんないいとこずくしのニコニコ学会ですが、ただ良い点をほめただけでは次につながらないと思うので、今後への課題点も3つ提起してみます。

3.1 登壇者たちはお互いに隔離されていなかったか?

今回の第一セッションは、他の方も批判されていますが、ニコニコ学会の問題点を凝縮していたように思います。確かに問題発言かと思われる内容や、出演者の話しがあまりにも噛み合ない点がありました。通常そういった点を円滑に回すのが司会であったりモデレーターであったりするのですが、今回はモデレーター不在のように感じました。そもそも座長って何なんでしょう?外部からみたところ、セッションの課題にあったスピーカーを選ぶための「キュレーター」の役割と、話しがかみ合うようにする「モデレーター」としての役割があるように思えます。「キュレーター」としては異なる分野の方をよんできた点、特に「ホリエモン」こと堀江貴文さんを呼んだことは関心を高める点では成功したように思えます。しかしながら登壇者間での文脈の共有が事前に計られていなかったようで、渋谷慶一郎さんの時にはいくつかの沈黙の時間を、そして堀江貴文さんとの時には「わからない」の応酬を招いたように思えます。

ニコニコ学会はいろいろなセッションの集まりなので第一セッションの座談会みたいな毛色の違うセッションがあるのは良いことだと思います。しかしながら初めてのニコニコ学会の視聴者があそこで離脱した人も多かったのではと思います。次回からはニコニコ学会の目玉で、なおかつフォーマットも安定している「研究100連発」を第一セッションに持ってきて、中身の予想が難しい座談会は、マッドネスの直前に持ってきた方が良いかとも思いました。

3.2 ニコニコ動画は聴衆を登壇者から隔離していなかったか?

私が最初にあげた課題は、「そもそもあまりフォーマットのない座談会を仕切る完璧な方法なんてあるのか?」という反論を招きそうですが、議論が停滞したりすれ違った時点で聴衆の声を入れてみるという方法があります。しかしながらニコニコ学会を通じてスタジオの出席者が意見を発する場が全くなかったのは個人的に不満でした。とくに「大学は必要か否か」という点に関しては、自分の意見を言いたかった人はたくさんいたのではないでしょうか(私もその一人です)? もちろん生放送中に会場の一人一人までマイクを持っていくのは不便な点もあるとは思います。ではニコ動にコメントすれば良かったのでしょうか?それも当てはまらないと思いました。

私は本当に一月ほど前までほとんどニコ動をつかったことがなかったのですが、あの場にいてようやく気がついたのは「ニコ動のコメントは意見を議論する場ではなく、その番組の熱さを表すバロメーター、ちょうどサッカー会場の観客の声援に似ている」ということです。もちろん大量の「8888888888888888888」をもらって嬉しくない登壇者はいません。でも多くの「wwww」 「8888 」間にはさまれた鋭い指摘や感想はまったくといっていいほどかき消されてしまうようです。唯一そのか細い声を拾っていたのは2nd session「いきものマテリアル」の座長である福地健太郎さんだけでした(キノコ会議は見ていないのでなんとも言えませんが)。

3.3 ニコニコ学会は世界から隔離されていないか?

話す内容やトピックは非常に多岐に渡ったものでしたが、登壇者は全員日本人、女性はとよ田キノ子さん一人、そして海外から参加した登壇者は(たぶん)私一人でした。
そもそも主言語が日本語なので致し方ない面もあるかもしれませんが、ニコファーレの会場にいた際の「単一人種」感は海外から帰国した翌日の私には結構圧迫的でした(もちろん他の東南アジア系の参加者がいたかどうかはわかりかねますが)。 またニコニコ動画は国内では知名度があっても海外ではあまり知られていません。今回の放送のタイムシフト版(プレミアム会員以外にも解放して下さってありがとうございます)を海外の友人に見せようと思っても「まずは会員登録してください」というのは結構ハードル高いです。

もし今後海外での知名度を高めたいのであれば(高める気がない場合は余計なお世話ですみません)以下があると良いかと思います。

  • ニコ動で流すと同時にYoutubeにも同時中継する
  • ニコニコ学会の放送内容をコピーフリーとすることで自分の好きな部分を切り取ってYoutubeに転載可能にする(もしすでに出来ていたらごめんなさい)
  • 海外在住日本人や、日本在住外国人の参加を積極的に呼びかける
  • 英語でイベントの結果を発信。

最後の「英語でイベントの結果を発信」は私一個人でもできることなので、現在絶賛執筆中です。少々お待ちください。

2014年1月3日更新:できました。"Nico Nico Gakkai: the craziest Japanese science conference ever"