London の暴動(私の体験)

Intro

ロンドンの暴動に関してTwitterFacebookで皆さんから心配していただいているのですこし私の体験についてまとめてみたいと思います。ちなみに最初に言っておきますが、私は別に危ない目に会っていないのでご安心を。


ちなみに今回のブログで取り上げた地域の場所はグーグルマイプレースに全て登録しておきました。

8月8日(月曜)

前日のツイッターで「ロンドン北部のTotenhamの辺りで暴動が起きている」という話が流れてきました。でもロンドン郊外の話だったので全くの他人事で特にテレビもつけていない状態でした。

いつもより少し遅めに起床したため、家から会社まで直通の電車に乗り遅れてしまいました。そこでBrixtonという駅までOverground (地下鉄のUndergroundと対比した鉄道をそういいます)で行き、そこからUnderground(地下鉄)に乗り換えるルートをとる事ことにしました。
電車の中で「メトロ」という無料新聞にTotenhamの事件の情報収集していました。やはりその時も記事のほとんどはTotenhamの辺りのことばかりだったと思います。

鉄道の駅を降りて地下鉄の駅に向かおうと思ったら、駅の手前の道路が封鎖されていました。バリケードの手前までいくと、バス停のガラスが割られているのが見えます。バス停などの公共施設の破壊(Vandalism)は日常茶飯事な国なので「あ〜、Totenhamの件で警察も過敏になってるな〜」との印象でした。

Bus stop window smashed. Brixton tube and roads closed. Riot impact?less than a minute ago via Mobile Web Favorite Retweet Reply

さらなる迂回路を経て30分ほど遅れて出社。そこで会社の同僚とTotenhamの件について色々情報収集。ようやくその時になって実は日曜日の夜からTotenham以外にも飛び火していて、その一部がBrixtonだったということを知りました。

  • 夕方

その後は普通に仕事を続け、6時からLondon Ruby User Groupというイベントに出席。イベント会場まで向かう道すがら、Hackney (ロンドン北部。来年のオリンピック会場の近く)にすんでいる同僚は「なんか家の近辺に暴徒が集まってきているらしいから今日は早めに帰る」とのこと。イベント中も気になってインターネットで調べると、人ごとではなく私の家の隣の区であるLewishamでも暴動が起きつつあるとのこと。心配になってイベントの途中でかえる事にしました。

Just realised that still some riot near my area , so going back homeless than a minute ago via Mobile Web Favorite Retweet Reply

帰りはEast London Lineという線のCroydon行きの電車です。でもなぜか行き先がCroydonの一つ手前(ちなみに私の最寄り駅はCroydonの二つ手前)になっていました。 電車に載っている間に「Croydon駅の近辺でdisturbance(騒ぎ)があるとの報告を受けたのでCryodon駅にはとまりません」とのアナウンスがありました。

「暗くならないうちに早くなんとか家に着かなきゃ」と少しドキドキしながら家路に。

無事に家に着いた後はずっとテレビにかじりついていました。

ロンドンの警察署長が全ての親は子供にコンタクトするように警告。安否の確認ではなくて暴徒と化してないかの確認というのがすごいless than a minute ago via web Favorite Retweet Reply

BBCとかのニュース番組を見つつ、ツイッターで自分の町の名前を検索したり、知人の動向を観察したりしていました。

「先ほどイベントにいっしょにいった同僚はちゃんと帰れたかな?」と思ってかれのツイートをちょくちょく観察したら、10時ぐらいには家に着いていたようです。でも彼の窓の外の風景はまさに修羅場だったらしく「foodie(フードを被った輩)が家の外をうろちょろしている」「あ、ようやく武装警官が到着」「トルコ人の店主達が集まって暴徒から店を守ってる」と実況中継していたのをずっと見守っていました。


私の家のまわりはものすごく静かで、たまにかすかにサイレンの音が聞こえる程度でした。
ツイッターでは私の近所(といっても1キロ以上はなれていますが)のスーパーに火の手があがったかあがってないかを噂するツイートがずっと流れていましたが結局は何もなかったようです。

8月9日(火曜)

昨晩はかなりの駅が閉鎖されていたのですが、今朝は全駅開いているようなのでいつも通り出社しました。自分の最寄りの駅に行く途中に公園の中とか通りましたが特に荒らされた形跡もなかったようです。

職場ではまた同僚達と情報交換。昨晩実況中継していた同僚は現場が危ないため出社してきませんでしたが、やはり暴動の部隊となったClapham Junctionにすんでいる友人は「駅の周りはほんとメチャクチャだった、あと昨日の夜彼女が家に帰ろうとしてもテムズ川より南にバスが怖がって行かず途中でおろされた」と言っていました。

(Clapham Junctionでの略奪の様子。撮影者が「こんなことして自慢できるの?なんでこんなことするの?」と聞くと略奪者から「払った税金取り返してるの」との返事。でも仕事してないから払ったのって消費税分ぐらいじゃない?)


ロンドンの鉄道はゾーン制といって1から5まで分かれているのですが、中心部の1ではあまり騒動は起きていなかったので、私の職場(Islington)の辺りは特に何もなかったようです。ただパトカーのサイレンの音は断続的に続いていたため、なんか嫌な気分でした。

昨日は2000人ぐらいの警官が出動していたらしいですが、今日は10倍の1万7000人ちかく動員されているそうです。同僚はみんな口々に「駅のまわりは警官だらけ」と言っていました。

昼間になると今度は荒らされた町をきれいにしよう、という呼びかけが#riotscleanupのハッシュタグとともに飛び交うようになってきました。

And this is amazing. RT @stu_mather_: Great picture of the clean up. http://yfrog.com/kj5oewj #londonriotsless than a minute ago via TweetDeck Favorite Retweet Reply

(昨夜の略奪のビデオの舞台となったClaphamでこんどはモップを手に立ち上がる市民)

なんかツイッターを見ていると「近所の公園にギャング達が集結中」みたいなデマが出回っているようですが、まだ何がおこるか分からない状態なので、5時には会社を出て帰宅する事にしました。

近所の駅に降り立ったときは、明るいうちからビールを飲みながらたむろしている若者組5人ぐらいがいましたが付近は閑散としてて別に暴動が起きそうな雰囲気ではなかったです。あと帰り道の店はだいたいシャッター落としていました。

近年の暴動

なんか日本や米国ではあんまり話題になっていないと聞きました。ロンドンの北部(Einfield)にあるソニーの倉庫が焼き討ちにあったニュースが流れている程度らしいですね。実はイギリスで暴動って近年にもいくつかありました。


確か2008~9年に金融危機で国が銀行を国有化で救済した時にはcityでデモがあり、それと鎮圧隊の間で小競り合いがありました。あと昨年の末は大学学費値上げを受けて、デモがありました。あの時は結構あれたのを覚えています。

でも今回は何が違うかというと完璧な愉快犯なんですよね。事の始めは黒人青年を警官が射殺したことに対するプロテストから始まったのですが、途中からは完全な便乗です。

上は略奪者(18歳の女子二人)へのインタビューですが、その内容を要約するとこんな感じです。

「暴動でみんなメチャクチャしてる。いいことだけどね。今ロゼワイン飲んでる途中。夜遅くまでよっぱらっちゃうよ。なんかただでいろいろゲットできたし。これって政府のせいだよね。保守党悪い。でもあたし達は警察達に自分たちがどこまでできるか見せつけてるのよ。今夜も続くといいよね。なんで地元で暴れているかって?金持ちが気に食わないからだよ。彼らはなんでも欲しいもの手に入るじゃん」

はっきり言って支離滅裂ですよね。略奪しているのは全然金持ちでもない地元の商店街とか、ただ自分たちの欲しいものがたくさんあるスポーツ店とかですし。

BBCかなにかを見ていた時に略奪者(中学生ぐらい)が「じゃあ次は時計をゲットしようか」という会話が映っていたのをみてぞっとしました。

なんかイラン政府が「警察は暴動者と対立するのではなく会話を」とアドバイスしているようですが、いわゆる中東とかで起きてる民主化の波とはまったく異質なものといってよいと思います。

I've seen protests & civil unrest before. but this casualness of destruction, the absence of motivating anger, are new to me.less than a minute ago via TweetDeck Favorite Retweet Reply

(知り合いのツイート:「暴動やプロテストは以前も見て来た。でもこの破壊へのカジュアルさと怒りといった動機のなさは初めての体験だ」)

2005年のテロの時はロンドン中心部からでれば関係ないと思ったけれど、今回はどこからわき上がるか分からないし、いつまで続くかも分からないという不安感がある。less than a minute ago via web Favorite Retweet Reply


あと時期も悪かったです。英Guardian誌によるとBirmingham でつかまった138人のうち98人が90年生まれ、ほぼ10代とみていいでしょう。しかも映像とかを見る限り中高生ぐらいの年代です。彼らは今夏休みなので平日もおかまいなしで暴れる事が出来るんですよね。


逆にこの緊急時を取り仕切るはずのロンドン市長も首相も休暇で海外にでたままで、暴動発生3日たってようやく戻ってきました。市長にいたっては最初は「警察に全幅の信頼をおいているから私が直接指揮をとる必要はない」とかまで言っていましたし。

More anger was directed at London Mayor Boris Johnson, who initially refused to return to the capital from his own holiday. He eventually announced he would be back in his office on Tuesday morning.

「怒りはさらに当初は休暇から戻るのを拒否していたボリスジョンソン市長にも向けられた。市長は最終的に火曜日に帰ってくる事を表明」

( http://www.itn.co.uk/home/26145/August+8+The+night+London+burned より)



ちなみにいまアマゾンのスポーツ部門の売り上げナンバーワンはベースボールバットと警官がもってるトンファらしいです。+5000% up って勘弁してほしいです。

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情報収集

家にいる時はテレビのニュースですが、特に特番くんでいるわけでもないので、映像以外はあんまり役立つ情報はないです。

ツイッターも家の近辺の情報収集に使っていますが、基本的に裏付けのないものはデマと割り切った方がいいみたいですね。あとは以下が役に立っています。

  • 英Guardian誌のブログ = ブログだけど1分おきに自動更新してくれていました。一番の信頼できる情報源だったと思います。
  • クライムマップ = 各地の被害をマッピング。ほんと見境なしという感じですね。
  • 鉄道のニュースページ = どの駅が閉鎖されているかでどのエリアが物騒か大体想像できます。今はもう閉鎖されているところはないようですが、一時20駅以上は閉鎖の表示が出ていいました。