ソーシャルベンチャーファンドから投資を受けるまで

前回さらっと「投資プログラム(Seed Acceleration programとか呼ばれたり)に受かりました」と書きましたがもうちょっと詳しく書いておきます。

  1. シードファンドとは
  2. ソーシャルベンチャーファンドとは
  3. 3ヶ月間何をする予定か

1.シードファンドとは

シード(Seed, 種)の文字通り、主に会社設立前のビジネスアイデア(あるいはプロトタイプ)を元に投資するプログラムです。
走りとしてはHeroku, DropBox, Redit, AirBandBなどを輩出したYCombinatorが有名で、だいたい6~12%ぐらいの株と引き換えに100〜200万円の投資、メンタリングやオフィススペース、投資家とのネットワークなどを提供してくれます。

私が前回起業にチャレンジした2007年はシードファンドといえばYCombinatorぐらいしかなく、ようやくロンドンでもSeed Campという似たようなプログラムが出来上がったところでした(そこに受けて落ちたんですが)。

今は5年前とは様変わりし、投資プログラムは雨後の筍のようにあります。


各投資プログラムもそれぞれ差異化をアピールしようと懸命なんですがだいたいこういったカテゴリーがあります。

  • 都心(シリコンバレー、NY, Londonなど)にあって、地元のネットワークをうりにしているもの
  • 様々な地域にプログラムが点在しておりグローバルネットワークを売りにしているもの
  • ちょっと田舎にあって、「生活費が安いので少ない投資額で長く活動可能」をうりにしているもの
  • 「教育」「ファイナンス」などテーマをしぼっているもの

私がリサーチしたときのリストがGoogle Docにあるので、ひょっとしたら他の人の役に立つかもしれないのでシェアしておきます

申し込み方法は至って簡単で、ながながとしたビジネスプランの文書は必要なく、色々な質問が書いてあるフォームに記入するだけです。
いわゆる就活のオンライン申し込みみたいなものでしょうか。 そんな詳しい履歴書が必要な訳ではなく質問は以下のようなのが多いです。しかも1項目120ワード以内とか

  • What is your company going to make?
  • Why is your solution different from others?
  • How do you make money?
  • Tell us about something cool/proud of you have built in the past.


YCombinatorのフォームの全文はここにあります。

就活フォームとの違いですがチームの紹介をビデオにとってYoutubeに載せてとかあります。


ただ20項目ぐらいの申し込みを複数のプログラムに応募するのは結構骨が折れるのですが、
プログラムに一括して応募もできるhttp://f6s.comみたいなサイトもいくつかあります(質問項目がまったく同じな訳ではありませんが、自身やチームについての情報などはチームプロファイルがそのまま提出されるのでちょっと便利です。)。

だいたい応募して2〜3週間ぐらいで、次に進むときは面接の招待がきます。海外のプログラムではSkypeでいいよと言ってくれるところもあるし、直接いかなければいけないところもあります。

私は2つほどのプログラムの面接を受けたのですが、フォーマットはどちらも似ていて20分ぐらいの面接の中、自分たちのピッチを5分ぐらいした後、残りはQ&Aでした。
面接官によってけっこう圧迫面接みたいなことをしてくる人もいたのですが、その人はあとで個別に「こういった点をもっと良くした方がよいよ」とアドバイスとかくれたのが親切でした。
やはりいろいろ聞いてくる人は興味があるから聞いてくるんだと解釈して前向きに受け取ったほうが良いですね。

私が受かったプログラムの面接は2度目の面接だったので、1度目の反省点からいろいろ修正することができたし、なにより面接官の人が私が以前カンファレンスかなんかで話していたのを聞いていたらしく、ラッキーでした。その人も自分でユーザーグループをオーガナイズしたりしているのでいろいろ共通点もあったのが良かったのではないでしょうか。


2.ソーシャルベンチャーファンドとは

で私が投資を受けることになったBethanal Green Venturesは「ソーシャルベンチャー」に的をしぼった投資プログラムです。

彼らの「What we're looking for」のページには以下の3項目があげられています。

  • The health and wellbeing of an ageing population(健康や国の高齢化問題)
  • The educational attainment and employability of children and young people(教育や若年者の雇用問題)
  • The social and environmental sustainability of communities(社会問題や環境問題)

彼らのベンチャーファンドそのものへの投資家はNesta(英国科学技術芸術基金)、Cabinet Office(英国内閣府)、Nominet Trust (.ukなどのドメインを管理している団体)など国がらみの機関がおおいようです(FAQページ参照)。

このプログラムの説明会にいったときは「5年間で年2回、1回に10社に投資することで100社の会社をつくる」みたいなことを言っていました。

The Big Idea ページの最後の2節が良いこと書いてあるので訳しておきます。

If we get it right, in five years time we will have helped create a group of hundreds of founders – all working on solving social problems. Some of them will have built huge new businesses and BGV will have seen the upside of that through our stakes in them becoming valuable. Many will have failed once and will be trying again. Others will be putting to use the entrepreneurial approach they learned through BGV in larger organisations.

We hope BGV will have an impact even wider than the people it helps directly. It will be an inspiration to others to build social ventures that will go on to help millions of people. If we succeed people who experience a social problem, won’t wait for government, big business or a charity to solve the problem for them, they’ll have the confidence and role models to start doing something about it themselves.

もしうまくいけば、今後5年以で社会問題にとりくむための何百人にもおよぶ創業者を作り上げることに寄与します。そのうちのいくつかは巨大なニュービジネスを作り上げ、投資家としてBGVは恩恵をこうむることになるでしょう。 そのうちの多くは一度は失敗して再度挑戦するかもしません。他の人はBGVプログラムを通じて得た起業家的なアプローチをもっと大きな組織で活用していくことになるでしょう。

私たちはBGVが直接サポートした人だけでなくもっと広範囲にわたるインパクトを持つことを期待しています。何百万人を助けることになるソーシャルベンチャーを作ろうと他の人たちのインスピレーションにもなるでしょう。もし私たちの試みが成功すれば、人々は大きな社会的な問題を政府や大企業やチャリティが解決するのに頼り切るのではなく、自分たちで何かをしようとするための自信とロールモデルを手に入れることになるのです。


3.3ヶ月間何をする予定か

で、投資プログラムにうかったってそれがゴールではなく、あくまでスタートポイントです。

The Program のページに詳しい中身があるのですが以下がメインになります。

  • 週1度、著名な起業家をゲストに招いて食事会(Founder Confidential)
  • オフィスアワー(海外の大学とかでよく使われる名称ですが、定期的な個人面談です)
  • ビジネスピッチの練習、会計などのサポート
  • 製品開発やPRなどのワークショップ

メンターのページを見るとTwitterの元リードデベロパーやgov.uk(政府のサイト。RubyGithubアジャイルなどを先進的に取り組んでいることで有名です)のプロダクトマネジャー、イギリスのソーシャルミュージックサイトで有名なlast.fmの元COOなどがいて話をきけるのが楽しみです。

そしてプログラムの最後には投資家を招いてのデモになります。
ここでうまくいけばもっと大口の投資が期待できたりする訳ですが、投資ってそんなに簡単に受けられるものではないと思います。別のプログラムの面接では「プログラム自体は3ヶ月だけれど、次のラウンドの投資を得るのに1〜3ヶ月はかかるだろうからシードマネーで6ヶ月はくらせる覚悟しといた方が良いよ」と脅されました。

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